麓の大屋根 〜おおらかな屋根の下で〜
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企 画:titel 桂竜馬
設計担当:納谷学
設計協力:ハイランドデザイン 原田正嘉
外構計画:GILIGILI 納谷学、納谷育代
構造設計:村田龍馬設計所 村田龍馬
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施工会社:木村工務店 木村幸雄、目黒稔久
造園工事:浅川造園 浅川
構造形式:木造在来工法 平屋
竣工年月:2024年2月
外構完成:2024年7月
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敷地面積:532.99㎡(161.23坪)
延床面積:121.86㎡(36.86坪)
PHOTO :吉田誠
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掲載誌:『GA HOUSES 198』
[部位別]住宅納まり図集
掲載WEB:japan-architects
海外生活が長かったクライアントが日本に帰ってきて、終の住処に山間での生活を選びました。
これから迎える老後の生活を頭の片隅に置きながら、静かにゆったりと流れる時間を豊かな空間で過ごしてもらいたいと考えました。
プランは、建築のほぼ中央にアクティブスペースを確保し、北側をプライベートスペース、南側をパブリックスペース(LDK)として3つのスペースを一つの大きな屋根で包みました。
アクティブスペースには5つのトップライトを設けました。そこから落ちる光はアクティブスペースを介し、両側スペースとの境界である半透明の壁によって、大きな屋根の気積がもつおおらかな光として変換され、季節や天候に関わらずこの住宅全体に届きます。
アクティブスペースとは、単に移動するミニマルな空間としてあるのではなく、関係し合う空間をより積極的に関係づける能動的で中間領域的な空間として位置づけています。
南に大きく開放したLDKには、大きな屋根から延びた深い庇のの下のバルコニーを設け、庭に跳ね出すように光あふれるデッキテラスを併設しています。
敷地は南向きの斜面で、隣家が正面にあります。敷地内には、山ぼうしをシンボルツリーに地域に自生する木々を散りばめ、敷地内から出た石は積極的に利用しました。木々は高低差を読み込みながら隣家や道路側からの視線から緩やかに守るように配置し、彼女が自然にやさしく包まれた豊かな生活を送れるように心掛けました。
「麓の大屋根」は、一つ一つの空間を大きくゆったりと繋ぎ、おおらかな屋根で包み込む彼女らしい住宅を目指して辿り着きました。
「麓の⼤屋根」 〜おおらかな屋根の下で〜
海外⽣活が⻑かったクライアントが数十年ぶりに⽇本に帰ってきて、終の住処として自然豊かな⼭の麓での生活を選びました。
計画敷地は山の南斜面にあり、高低差は南北25mに対しておよそ1.2mです。周囲の住宅も同様の緩やかな勾配の土地に対して南側に庭や畑を確保して、建物は北側に寄せて建てています。都市部とは違う区画の大きい土地に広い隣棟間隔を保ち、この辺りの宅地の風景を作っています。
敷地の接道は東側。住宅地内の道路のため交通量は少なく、道路の高低差は南端でつながり、北側で1.8m高くなっています。
道路を挟んだ土地は県が管理する緑化園が広がっていますから、当面の間は雑木林が今のまま保たれるでしょう。
計画敷地は周囲の緑に包まれ、背景に連峰が続く絵に描いたような山の麓の一画です。
設計を始めるにあたり、これから彼女が迎える⽼後の⽣活を頭の⽚隅に置きながら、静かにゆったりと流れる時間を自然と調和し大らかで豊かな空間で過ごしてもらいたいと考えました。
その建物の平面計画の前に、ランドスケープを考慮しながら建物へのアプローチを考えました。アプローチは、敷地南東の角から接道を北側に折り返すように設定しました。土工事を少なくして住宅へのアプローチの勾配を緩やかにスムーズにします。
プランは、建築のほぼ中央に道路からのアプローチが繋がるようにし、アプローチがそのまま玄関へと続きます。玄関の前にはアクティブスペースを確保し、その北側をプライベートスペース、南側をパブリックスペース(LDK)として、⼀つの⼤きな屋根で包み込むことにしました。
この大屋根を実現するため、南面は38×210×約8000、北面は338×150×約7000のLVLを使い、共に303ピッチで計画しています。
アクティブスペースは玄関ホールでもあり、プライベートスペースとパブリックスペースを繋ぐ動線が交差する大きな廊下ともいえますが、むしろ両サイドのスペースを繋ぐ中間領域的空間をイメージしながら設計しています。
プランの中心にあるそんな空間に大きな屋根の棟の軸を合わせ、シンボリックな高い天井を確保し、北側の勾配屋根にトップライトを設けました。
トップライトからの光は、LVLの間を抜け、季節と時間によってアクティブスペースの床まで光を届けます。
そこから落ちる光はアクティブスペースはもちろん、両側スペースとの境界である半透明の壁によって⼤きな屋根の気積がもつおおらかな光として変換されます。大きな平面を持つこの住宅の中心に、季節や天候に影響を受けない豊かな光を届けます。
アクティブスペースとは、単に人が移動するという機能だけのミニマルな空間としてあるのではなく、関係し合う空間をより積極的に関係づけ、能動的で新しいアクティビティの関係を生み出す空間として位置づけています。
南に⼤きく開放したパブリックスペース(LDK)には、⼤きな屋根から延びた深い庇の下のバルコニーを間⼝いっぱいに設け、庭に跳ね出させました。登り梁のLVLを桁に載せ、303ピッチのLVLの間には複層ガラスを嵌め込みました。
昼は外からの光がインテリア側に入り、夜には住戸の光がバルコニー側に溢れます。いずれも屋根の連続を見せ、内と外を繋げます。
バルコニーの一部には、光あふれるデッキテラスを併設しています。庭の木々や空とダイレクトに繋がる場所があればと考えました。
敷地は南向きの斜⾯で、隣家が正⾯にあります。
敷地内には、⼭ぼうしをシンボルツリーにして、麓の周辺に⾃⽣する⽊々を散りばめ、周囲の環境と一体となるように考慮しました。敷地内から出た⽯は、庭の要所要所に配してベンチ代わりに利用したり、敷地内のレベル差を解消する土留めとして積極的に利⽤しました。
庭の⽊々は敷地の⾼低差を読み込みながら隣家や道路側からの視線から緩やかにプライバシーを守るように配置し、彼⼥が⾃然にやさしく包まれた豊かな⽣活を送れるように⼼掛けました。
「麓の⼤屋根」は、機能の枠を超えて⼀つ⼀つの空間を⼤きくゆったりと繋ぎ、おおらかな屋根で包み込む彼⼥らしい住宅を⽬指して辿り着いた答えです。