尼崎パーキングエリア 〜160mの縁側〜

作品情報
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尼崎パーキングエリア 兵庫県尼崎市
  • 設計担当:納谷学、納谷新、太田諭、高野健太、源真希

  • 構造設計:yAt構造設計事務所 森部康司

  • 設備設計:ZO設計室 柿沼整三

  • 照明計画:岩井達弥光景デザイン 岩井達弥

  • 外構計画:PLAT design 三田武史

  • 施工会社:大日本土木・加賀田組JV 黒島慶二、小川慶介

  • 構造形式:鉄骨造 敷地面積:7130.00m² (2156.83坪)
    延床面積:736.50m² (222.79坪) 竣工年月:2019年3月

  • 受賞歴 :照明学会照明普及賞
         JIA日本建築大賞2020 日本建築家協会優秀建築100選
         尼崎まちかどチャーミング賞 まちかどスポット部門
         日本建築美術工芸協会 AACA賞 優秀賞
         日本建築士会連合会 優秀賞
         グッドデザイン賞2022 グッドデザインベスト100
    掲載雑誌:『新建築 2019年7月号』

尼崎パーキングエリア 兵庫県尼崎市

尼崎パーキングは、陸橋型高速道路・阪神高速3号神戸線の上り車線側にある。 高速道路上にあるパーキングエリアはどんな風にドライバーや利用者を受け入れるのが望ましいのだろうか。また、利用者がパーキングエリアに求めるものは何だろうか。

われわれは、安全で安心、快適で衛生的な施設であることはもちろん、都市圏の高速道路上にはない多くの豊かな緑に囲まれ、有機的な素材(木)と鉄による優しく柔らかい空間で利用者を包み、静かな空間によってリフレッシュして次の目的地に安全に向かえるような快適な休憩所を備えた公園のようなパーキングエリアを提案したい。

大阪の手前数十キロに位置するこのパーキングエリアは、高速道路上にあり全長は466.4mにおよぶが、最大幅員は25mと細長い敷地形状となっている。応募要項の参考図によると、そのうち駐車スペースは全長およそ200m、つまり駐車場の一番遠くに駐車した車からトイレ・休憩スペースまで200mも歩かなければならない。これでは、小さな子供を持つ親やお年寄りには大きな負担になるし、トイレに行くまで多くの利用者が駐車場を横切らなければならず、安全確保の意味でも問題がある。

そこで我々は、既存の遮音壁に沿ってできるだけ駐車スぺースの中央付近にトイレスぺースを細長く配置して、駐車スペースのどこからでもトイレスペースに最短距離で安全にアクセスしやすいようにした。同様に休憩所は高速道路側に背を向け敷地東の緑地と繋がるように加速車線に沿ってパラレルに配置した。高速道路側には奥行き1mの備蓄倉庫を30m設置することで収納管理しやすく、万が一の時に使いやすい形状としたことはもちろん、加速車線が近い休憩所の遮音壁としても機能する。

既存の遮音壁と遮音機能を備えた休憩所の間は、高速道路をずっとエンジンとタイヤのノイズを聞き続けてきたドライバーにとって静かにリラックスできる緑豊かで開放的な広場になっている。

『新建築 2019年7月号』のTEXTより抜粋

 〜160mの縁側〜

計画地は、阪神高速3号神戸線上り・高架上。高速道路の距離料金化により料金所が廃止され、高速道路にしては幅広のスペースが残った。2016年に阪神高速道路はそのスペースにトイレと休憩所を計画する設計コンペを開催し、われわれの案が選ばれた。当時の設計条件は、南北約20m東西約400mの敷地の東側に施設をまとめて計画するものだった。

われわれの案は、敷地全体を公園に見立て、緑化フェンスや芝生、植栽によって滑走路のような敷地を緑化することで、利用者が安らげる環境を用意した。その中に計画建物を奥行き6m長さ160mの細長い平屋の建築とし、利用者が降車してから施設までの距離を最短にして、高速道路上の安全を確保した。

160mの長い建築は、高架のエキスパンジョイントを4箇所またぐことになった。ちょうど電車が5両連結しているような状態である。また、計画建物は地上15mにあるため耐風圧強度など相応の強度が求められた。特に耐震強度は、過去の阪神・淡路大震災の教訓から阪神高速道路が独自に定めた規定により、通常の約8倍の耐震性能が求められた。つまり、平屋にしてはずいぶん骨太のプロポーションの構造体になった。

提案した建築は、軽やかなひさしを持つ縁側的な空間である。5棟の連結した構造体は、それぞれが余条件を満たしながら軽快に繋がらなくてはならない。適切な壁やコア、柱を配しながら、建築を東側でクランクさせグランドレベルを緩やかな勾配によって1m程かさ上げした。かさ上げした公園には大きな木を植え、高速道路上とは思えないような林をつくった。

西側の駐車スペースは土木スケールだが、クランクさせて生まれたハナミズキ広場は、かさ上げしたグランドレベルと階高を抑えた建物によって建築スケール(ヒューマンスケール)へとゆるやかに変換させた。

このクランクは、土木スケールから建築スケールへ、動的空間から静的空間へ、喧噪から静寂へ、人口から自然へと空間を変換する。

土木である高速道路上に、さまざまな操作によって建ち上がった建築が、利用者に高速道路上だということを忘れるくらい心地よく働きかければと思う。

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