北茨城の平家 〜川に寄り添う〜

作品情報
TEXT
北茨城の平家 茨城県北茨城市
  • 設計担当:納谷学、太田諭
    構造設計:かい構造設計 寺門規男
    施工会社:

  • 構造形式:木造在来工法平家

    竣工年月:2006年7月

  • 敷地面積:443.77m²(134.24坪)

    延床面積 : 134.15m²(40.58坪)

  • 掲載誌:『My home+ vol08/11』
        『新建築 住宅特集 2007.02/2008.05号』
        『マドリの教科書』
        『デザインで選ぶ住まいの設備2007』
        『大人の洗練インテリア2008/11/10』
        『最高の間取りをつくる本』
        『月刊ハウジング2010年 10月号』

北茨城の平家 茨城県北茨城市

小さな川だけど、鮎が遡上し太公望が竿をのばす清流沿いに、南に向いた平家の住宅を計画しました。

川も南、全ての部屋を川に向かって並列に並べ、川に近づき南から太陽の光を存分に享受できる環境を最初に用意しました。

もっと川に近づくことはできないか。

全ての部屋をグランドレベルから数段掘り下げてみました。掘下げた分、天井も高くなりダイナミックな空間を手に入れました。外のデッキテラスもリビングからの延長で川に近づきました。籠り感と開放感を同時に手に入れ、川に寄り添う矩形の住宅ができました。

『新建築 住宅特集 2007.02/2008.05号』のTEXTより抜粋

〜単純なルールによる多様性〜

敷地は北茨城の街のはずれ、鱒や鮎が生息し季節によっては鮭があがってくる清流に面している。そして、清流を挟んで敷地の前にある小さな山が、この住宅の環境をさらに豊かなものとしている。

何の仕掛けをしなくても全面開放できるこの豊かな敷地の持つ環境で、建築でいったい何ができるか、何をする必要があるのか。設計当初からそれが我々に問われているシンプルで大きな命題となってきた。

別荘なら一時の快楽のために生活感を脱した空間の提案もあるだろう。あるいは住宅でもここなら限りなく大きく自然に開放もできるだろう。しかし我々は、もっと日常的に自然を身近に引き寄せ共存させたい。ダイナミックな自然も、窓越しに見える小さな自然も、家族の後ろにながれるバックグランドとしての自然も等価に扱いたい。最初にこの住宅がいかに川に優しく近づき、接することができるのかを主眼に置いている。そのために大袈裟な仕掛けで場をつくるのではなく、むしろさりげなく目の前の同じ自然をいろいろな角度で切取り享受する多様な空間を勝ち取る方法を探った。

単純な立方体は生活のスケールと要求されたいくつかの個室を当てはめ、平家にしてできるだけ長く川と接し、住宅の全ての場がそこに向き合えるようにボリュームを決定した。そして後に増築できるように敷地の長手方向に余白を残し配置することにした。

もともとこの敷地は住宅のための造成地だったため、盛り土で地耐力が期待できない。並列に置いた部屋をその部屋の用途によって少しだけ地面に沈めたら、きっと地盤改良の量も減るうえに、個々のスペースが自立しはじめ住宅がより川に近づけるのではないかと考えた。住戸内の道路側からそれぞれのスペースに適切な段数でステップダウンし、そこに相応しい空間ボリュームを会得し風景を切取る。それによって、そこで起こる身体的な体験が、同じ平面におかれた場とはまったく異なる空間へと転化することを期待した。

「平面スケールと用途に合わせ、ステップダウンの段数をコントロールする。」

単純なたった一つのレベル設定のルールが、多様な空間とシーンを生み出した。同じ風景を違うレベルから違う切取り方をすることで多様な自然を享受できる。さまざまな切取られた自然が、クライアントの日常の中でより能動的にあることを望みたい。

戻る