恵比寿の住宅 〜5.1坪のスキップフロア〜

作品情報
TEXT
恵比寿の住宅 東京都渋谷区
  • 設計担当:納谷学、相田宗徳
    施工会社:広橋工務店 廣橋利昭
    構造設計:ストラクチャーエンバイロメント アラン・バーデン

  • 構造形式:RC造+鉄骨パネル造(軽量溝型鋼)

    竣工年月:2009年11月

  • 敷地面積:28.52㎡(8.62坪)

    延床面積:62.844㎡(19.01坪)
    地下1階床面積:12.168㎡(3.65坪)
    1階床面積:16.89㎡(5.10坪)
    2階床面積:16.89㎡(5.10坪)
    3階床面積:16.89㎡(5.10坪)

  • 受賞歴:日本建築士会連合会賞 奨励賞

    掲載誌:『Casa BRUTUS 2010年度2月号』
        『日経アーキテクチュア 2010年5月10日号』
        『天然生活 2011年度7月号』
        『建築知識 2012年3月号』
        『ディテール 2012年4月192号』
        『住宅特集 2010年7月号』
        『日本の住宅をデザインする2』

    テレビ:完成ドリームハウス

恵比寿の住宅 東京都渋谷区

敷地面積8.62坪、建築面積5.10坪、これまで設計してきた住宅で最小の敷地面積と建坪です。

街には美味しいレストランがあり、素敵なカフェや美容室、おしゃれな花屋さんもあります。

生活のための最小限の備えと空間があれば、豊かな生活ができる。

都市で生活することを潔く教えてくれた住宅です。

計画では、住宅の中央に縦に貫く階段を配置し、階段の踊り場を少し広くしたような南北のスキップフロアが家族をつなぎます。

都市で生活するための覚悟と潔さを教えてくれた住宅です。

『住宅特集 2010年7月号』のTEXTより抜粋

〜5.1坪都市住宅の可能性〜

敷地は、JR恵比寿駅と地下鉄広尾駅の中間にある。

周辺の幹線道路には中高層ビルが建つため、本敷地はちょうどそれらのビル郡に囲まれた盆地のような住宅地のほぼ中央に位置する。

敷地面積8.6坪、建坪5.1坪、前面道路2M弱という条件下での都市型住宅の在り方が問われた。これまでわれわれが手がけた住宅でも最小の建坪だ。

また、条件として、建物の延べ床面積は60㎡以上を確保しなければならない。天空率から敷地での最高高さを割り出し、地下1階地上3階の4層構造、地下を出来るだけ小さくするため7層のスキップフロアという構成が決まった。前面道路が狭いため、大型の重機は入らない。しかし、このネガティブな条件の中、建築の部材を小さく軽量化することで、この敷地ならではの都市型住宅の提案に繋がるのではないかと考えた。

我々は、地下1階を鉄筋コンクリート造、地上3層は平面積を少しでも確保するためスチールパネルで構成することにした。スチールパネルは、人力で運搬して組み立てられるように重量を80〜100㎏を目安にして分割。また、このパネルはインテリアで露出するため、その分割のピッチがそのままインテリアの表情となる。われわれは、スチールパネルが柔らかく生活を包み込むように450×75×4.5の軽量溝型鋼で9㎜のフラットバーを挟み込む構造を採用した。敷地奥より縦長のスチールパネル46枚を連結、スラブと鉄骨階段で水平剛性を確保したとき、この都市住宅のインテリアも終了した。

『日本の住宅をデザインする2』のTEXTより抜粋

1)平面計画について

5.1坪の平面に対して建築基準法上の階段の占める割合は大きすぎる。その大きすぎる階段を平面の中央寄りに偏芯させて計画した。二つに分割された階段の踊り場に住宅としての場を意識し、細かな寸法を決定した。小さな住宅だからといってぎゅうぎゅう詰めのプランに陥るのではなく、あえて外部を感じるサンルームを設けたり、敷地周囲の環境を読み取り開口部を計画した。豊かさとは大きさではなく、住まい方だとクライアントに教えて頂いた。

2)断面・構造計画について

7つの床を交互にスキップフロアとして構成しているこの住宅は、縦方向への移動がたいへんだ。たいへんな運動がたいへんにならないように、小さな住宅だがゆったりとした踏み面と小さな蹴上げ寸法を用意した。つまり緩やかな階段にしたのである。平面の小さな住宅でスキップフロアということは、床の水平剛性が取り難い。この住宅では、階段の鉄骨を厚くして構造の水平剛性を確保した。結果、上りやすい安定した階段になった。

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