長久手の平屋 〜関係を形づくる〜
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設計担当:納谷学、島田明生子
構造設計:yAt構造設計事務所 須藤崇
施工会社:友八工務店 根岸充
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構造形式:鉄骨造 平屋
竣工年月:2018年5月
PHOTO :吉田誠
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敷地面積:498.35㎡(150.75坪)
延床面積:93.72㎡(28.35坪)
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掲載誌 :『居心地のいい家をつくる注目の建築士&建築家100人の仕事』
掲載WEB:japan-architects
大きな敷地の中にクライアントのご両親の家、実家があります。
その敷地の適当な場所に適度な大きさの住宅を計画することになりました。
一般的な住宅同様に、北側に寄せて南の庭を確保するも良し、ハウスメーカーのカタログの様に2階建てにするも良し、あるいはプライバシーがしっかり守れる中庭を囲うプランもあるかもしれません。
これまで多くの建築を計画して実現してきましたが、比較的都市部の計画が多かったように思います。その為か、敷地や建築基準法、クライアントの都合等を理由に、合理的で無駄のない計画がコストダウンに直結して、クライアントの要望を実現しやすいと考えてきました。今も大きな意味では変わりません。
この計画では、適当な場所に適度な大きさの空間を実現するため、何らかの根拠が欲しいと思いました。
もう一度敷地の環境を読み込むと、この敷地の南側、前面道路は一方通行の道路ですが、思いのほか交通量が多いことが分かりました。
そこで南の庭を確保しながら前面道路との距離を適当に取って、安全と日照を確保しました。
大きな敷地の東側は、敷地奥の実家へのアプローチがあり車の乗入れがありますから、ある程度の幅のアプローチを確保しなければなりません。実家もまた南側に庭を確保していますが、大きな敷地の中に小さく完結しています。
クライアントの家と実家との間に直接的ではない何らかの関係を持たせたいと考えました。
そこで実家の庭と繋げながら、年に一度のこの地域のお祭りの為の広場があれば、この二世帯を間接的に繋ぎ、離さない関係にふさわしいと考えました。
「徳島の住宅」(住宅特集2015年6月号)では街の気分(実情)を空間スケールに落とし込んだことで、建築の様相が現れました。
ここでは、一般的な敷地環境に加えて、街の歴史や家族の関係等、複数の要因が次の世帯の家族の在り方を導く事を確認できました。
道路からの距離、実家へのアプローチ、実家と繋がる庭と広場、何一つ絶対的な数字はなく、ただ過不足のない適当な距離からこの平屋は生まれました。
最近、建築を形づくるのはこのくらいの緩さ(フレキシビリティ)が必要なのではないかと思っています。