404号室 〜音楽とキッチン、リノベーションで繋げる〜
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設計担当:納谷学、中村和基
施工会社:田工房 内田晃晴
既存構造:鉄筋コンクリート造
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既存規模:11階建て分譲マンション
築年月 :1968年9月
竣工年月:2004年1月
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延床面積 : 65.79m²(19.90坪)
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掲載雑誌:『建築知識』
『デザインで選ぶ住まいの設備2007』
『Sound&Life』
『Goodリフォーム 04月号』
『新建築2005.02号』
『Archi+Decor No.02』
『リフォームハンドブック2005』
『ナイスリフォーム No.13』
『室内 2004.06号』
『日経アーキテクチャ 03.22号』
『男の隠れ家 2004.05号』
ご主人は、オーディオマニア。奥さんは料理にこだわり。「404号室」は、二人の趣味を凝縮したリノベーションです。
二人のための空間実現のため、最初にリビングとオーディオルームを重ね合わせ、日常的に音楽を楽しめるように提案しました。天井や床は、場所によって音が反射したり吸音したりする下地や仕上げを考え、造り付けの収納やベンチシートを使って音を吸収させたり、音環境を演出するための技術が詰まっています。
奥さんには、キッチンカウンターをカウンターでパン粉をねったり叩いたり、素材が直接置けるように耐光性の強いコールテン鋼を使ったコンパクトで作業性のいいキッチンに設計しました。
住宅に決まった住み方はありません。それぞれの家族にはそれぞれの生活があり、それを支えるそれぞれの器としての住宅があります。もちろんリノベーションでも可能です。そんなことを確信させてくれたリノベーションです。
『新建築2005.02号』のTEXTより抜粋
築30年の分譲マンションの一室の改装である。
主人は、無類のオーディオマニア、加えて奥さんは何種類もの酵母菌を育ててパンを焼くくらいの懲りよう(パンマニア?)である。我々に与えられたテーマはひとつ。ふたりの趣味と生活を同じスペースの中でまとめ上げることである。
そこで、我々はあたえられたマンションの空間を3つの大きなゾーンに分類した。
1つは、主人のためのオーディオルーム兼リビングゾーン。音響効果から、クローゼットをスピーカーの1mほど背後に設置することで衣服での吸音効果を期待した。また、入り隅は音がこもるというので天井のコーナーをラウンドさせ、既存のサッシの前にはカーテンの代りにコットンフリースの折戸で吸音させた。そして天井には吸音用と反射用の二種類のパネルを用意し、音楽のジャンルと音の好みによって自在に組み合わせることができるようにしている。
2つ目は、奥さんのためのキッチン・食堂ゾーン。パン作りのための広めのカウンターとハードな使用にも耐えられるようにコールテン鋼をウェザーコート使用としている。全体はモルタルにウレタン塗装を施し、シンプルで機能的なキッチンスペースを提案している。
3つ目は、ふたりの共用ゾーンとでもいうのであろうか。寝室や洗面、浴室、納戸などのスペースである。共用のためのスペースは最小限で構わないということで、ベットスペースを持上げその下を納戸としたり、クライアントの要望を断面的な操作を施しミニマムにつくり込んでいる。
こうして彩られた3つのゾーンは、日常生活のために必要な機能を満たし、それぞれをハッキリとした領域に分節しながら繋げることで彼等のニーズに応え、生活をより豊かにすることができるのではないかと考えた。
『建築知識』のTEXTより抜粋
〜ベンチと収納を兼ねる方法〜
オーディオマニアからの依頼でマンションのリビングをオーディオルームとしても使えるようにリノベーションすることになった。
古いLPをストックするため収納を製作することになったが、LP盤のジャケット(315×315)の大きさはベンチの座面の下のスペースに収納するのに都合が良かった。しかし、座面が板では日常の生活がちょっとさみしい。
そこでウレタンと合皮を貼った金物を使わない脱着式の座面にして、ベンチシートにしか見えない収納のディティールに辿り着いた。