能代の住宅 〜夏の家、冬の家〜

作品情報
TEXT
能代の住宅 秋田県能代市
  • 設計担当:納谷学、藍澤和孝

    構造設計:かい構造設計 寺門規男

    施工会社:成田建業 成田譲、原田

  • 構造形式:木造在来工法 2階建て

    竣工年月:2005年4月

    PHOTO :吉田誠

  • 敷地面積:449.52m²(135.71坪)

    延床面積 : 177.62m²(53.62坪)

    1階面積 : 88.81m²(26.81坪)

    2階面積 : 88.81m²(26.81坪)

  • 受賞歴:2006年 第1回JIA東北住宅大賞2006 優秀賞

        2006年 第27回INAXデザインコンテスト 金賞

        2006年 第20回秋田の住宅コンクール秋田県知事賞

        2006年 インテリアプランニング賞 入選

    掲載雑誌:『建築知識』

         『新しい住まいの設計 2007.03月号』

         『新建築 住宅特集 2006.01月号』

         『CONFORT 2006.10 No.92』

         『高齢者のすまい』

         『THE NIKKEI MAGAZIN 2008 no.60』

         『住まいの設備2008』

         『建築家のすまいぶり』 中村好文著

         『住宅10年2000-2010』

         『JUU 3号』

         『リプラン2007夏秋号』

能代の住宅 秋田県能代市

能代は秋田県の北西部、日本海から吹く風は強い。夏は心地よい風が吹き、冬は雪こそ少ないのですが、鉛色の雲に覆われ体感気温の低い日々が続きます。そのため能代では、開口部が小さく壁の断熱性能に重きをおいた住宅が多いのです。当然、冬季期間は日射量が少ないため室内は暗くなりがちで、開放的で明るい住宅の実現は困難です。

住宅の性能を外壁一枚の断熱性能や設備機器に頼るのではなく、建物全体のプランニングにより解決したい。

なぜなら、それこそが建築の持っている力強い解答と考えるからです。

そこで、プランの二重化によって内側と外側の境界によって夏と冬の気候をコントロールしたいと考えました。

日常生活のほとんどを2階で過ごせるようにして、1階には、駐車場のほかに使用頻度の少ない和室などを配置しました。1階部分は防犯と雪の影響を考慮して開口部をなくし、2階は外周全体をガラスにして解放性の高い空間としました。また、2階の外側の床をスノコ状にして上下階の風と光の通り道を確保しました。

夏には内側の境界を開放し外側の壁の領域まで広がりをもち、風ぬけのいい解放性の高い「夏の家」として使われます。冬には内側の建具を閉じて柔らかい光に溢れたコンパクトで静かな「冬の家」として使われます。

コンパクトな生活は光熱費を抑え、クライアントの行動に負担をかけません。浴室やトイレは住宅の中央に配置し、冬の寒さから解放された柔らかい境界による明るい浴室となります。

こうして、「夏の家、冬の家」ができました。

『新建築 住宅特集 2006年01月号』のTEXTより抜粋

「能代の住宅」 〜夏の家、冬の家〜

能代は秋田県の北西部、日本海側に位置する。海岸線沿いには、日本海から吹く強い風と砂から街を守るため、江戸時代に植林された松の砂防林がある。風の強さは今も変わらず、夏は心地よい風だが、冬は雪こそ少ないがなまり色の雲に覆われ、体感気温の低い日々が続く。そのため能代では、開口部が小さく、壁の断熱性能に重きをおいた住宅が多い。当然、冬季期間は日射量が少ないため室内は暗くなりがちで、開放的で明るい住宅の実現は難しい。

我々は、住宅の性能を外壁一枚の断熱性能や設備機器に頼るのではなく、建物全体のプランニングにより解決したい。なぜなら、それこそが古典的だが建築の持っている力強い解答と考えるからだ。

そこでまずプランの二重化を考えた。内側と外側の境界によって夏と冬の気候をコントロールできるのではないか。また、日常生活のほとんどを2階で過ごせるようにして、1階には、駐車場のほかに使用頻度の少ない和室などを配置した。そして、1階部分は防犯と雪の影響を考慮して開口部を極力ひかえ、逆に2階は外周全体にペアガラスをまわして解放性の高い空間とした。また、二重化したプランの室内環境を整えるために、2階の外側のスペースの床をスノコ状にして上下階の風と光の通り道を確保した。

しかし、外側の空間を動線として使い、内側だけで生活するには、少し大袈裟な仕掛けに思えた。そこで、外側の壁が直接外気に接するハードな境界だとしたら、内側の壁はソフトな境界として考えられないか。つまり、建具などの可動する境界により光や風を通したり、内側と外側の関係を季節や使い勝手、もっと繊細に扱うなら、時間帯によって自在に使いわけられる境界として機能させたい。

夏には内側の境界を開放し外側の壁の領域まで広がりをもち、スノコの床からの風ぬけのいい解放性の高い「夏の家」として使われる。冬には内側の境界を閉じて柔らかい光に溢れたコンパクトで静かな「冬の家」として使われる。コンパクトな生活は光熱費を抑えクライアントの行動に負担をかけない。浴室やトイレは住宅の中央に配置されることにより、冬の寒さから解放され柔らかい境界による明るい浴室となる。

そして我々は、年老いた夫婦の明るいおだやかな生活を切に望む。

『建築知識』のTEXTより抜粋

光を通す間仕切り事例 〜ワーロン建具〜

副題で—夏の家、冬の家—と名付けたこの住宅は、夏は外壁まで、冬はワーロンを太鼓貼りにした建具の内側でコンパクトに生活する。太鼓貼りの建具は断熱性能もあり冬の寒さから守り、回廊全体のひかりを内側の居室に柔らかく届ける。

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