PROTO passo 〜街(ストリート)を引き込む〜

作品情報
TEXT
PROTO passo 東京都中野区
  • 企画運営:プロトスタイル株式会社
    設計担当:納谷学、太田諭
    構造設計:かい構造設計事務所 寺門規男
    施工会社:江中建設株式会社 茨木柾貴
    お問合せ:リネア建築企画

  • 階  数:地上4階建て
    世帯数 :7世帯
    構造形式:RC壁式構造

    竣工年月:2016年3月

  • 敷地面積:144.09m² (43.58坪)

    延床面積:396.52m² (119.95坪)

  • 掲載誌 :『新建築 2016年8月号』

PROTO passo 東京都中野区

7世帯の小さな集合住宅の計画です。

街(ストリート)を敷地奥に引き込み、戸建住宅のように街からダイレクトに繋がるようにしました。

各住戸が集合住宅の形式から少し離れて、戸建住宅の持つ独立性に近づけばと思いました。

7世帯の小さな街の住人が、自分の部屋を自邸のように大切に使い、街の交流に参加することを願っています。

『新建築 2016年8月号』のTEXTより抜粋

〜街を引込む〜

計画地は、西武新宿線・新井薬師前駅から西へ300mほど。この辺りでは2003年に「PROTO」、2009年に「PROTO plus」を計画している。共に敷地いっぱいの計画で、生活が街に溢れるように扁平ラーメン構造による解にいたった。そして今回の「PROTO PASSO」はエリア3棟目となる。

敷地は、前面道路を挟んで小学校のグランドに面している。敷地は間口約6m奥行き約20m、都市圏ではあたり前になっている高密度な集合住宅が求められた。

近隣の同じような敷地に建つ集合住宅は、建ぺい率や容積率、北側斜線といった法的条件から同じような形態が建ち並ぶ。まるで「建売り集合住宅」だ。しかしそれらに共通して言えることは、法的条件で形を導き、少しだけ新しい建材をまといあたかも時代の流行だと街並に現れるが、その本質はここ数十年なんら変わっていない。そして建築が街とまったく関係を持たずに計画されている。結果、表層建築が街をつくる。

われわれは、敷地の間口6mのおよそ半分を使い、通りを建築の奥まで立体的に引込むことで、建築に公共性を持ち込むことと表層的な街並に路地空間にも似た魅力と楽しさを与えること、そして個々の住戸(住人)が街と繋がることを考えた。

建築に路地的な空間の楽しさを持たせるには、まずちょっとした閉鎖感と奥行きを持ち合わせていなければならないが、同時に街に開き公共性を得るには路地の狭さでは叶えられない。そこで3階の住戸を隣地側にキャンチレバーで跳ね出すことで路地のような囲われた空間を確保しつつ、隣地側は隣に建つ集合住宅の壁に沿っていく幅の広いアプローチをとることによって、街に開かれた公共性を手に入れた。

歩道から続くゆるやかな大階段は隣地の集合住宅の壁面づたいに敷地奥の2階レベルに導く。大階段の先は、縦に大きく吹き抜け、空に向かって通りが延びる。その中をやはりゆるやかな階段が抜けていく。そして、その立体的に構成された通りに住戸が並ぶことになる。住戸が街と繋がることで、住人は集合住宅に住みながらも自分だけの戸建てに住んでいるような独立感を得る。

構造はRC壁式構造による解となったが、建築自体が公共性を持つことで、彫りの深い街並と新しいコミュニティーが形成されればと願う。

  • どういう人がここに住むことを想定してきたか

独身の男女1人暮らし、あるいはディンクス2人。プライバシーは重んじるが、社会活動に積極的に参加したり、人とのコミュニケーションを取ることに抵抗がないような人。年齢層は、比較的若い世代になると思うが、この建築を通じて共同意識と独立意識をバランスよく併せ持つような健全な大人?

  • このエリアの将来をどう考えたか

東京の住宅地で公園に面してたり、抜けがあって遠景を望めるような環境は低層では意外とありません。このエリアは、中野通りの桜並木に近接し、特に敷地の前には小学校のグランドがあって視界が抜けます。東京の多くの住宅は閉鎖駅ですが、周囲の環境に開くことで住人が街との距離をより身近に感じて生活をするということは、社会との接点を持つことだと思います。この辺りには、その可能性を強く感じました。

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